ユースチケットで、オーケストラを聴こう。
ファゴットの音色とは、一心同体。|佐藤由起(ファゴット奏者)
-クラシック音楽との出会いは何でしたか。
中学に入学したときに、オーケストラの部活に入部したことがきっかけです。実は全く違う楽器をやりたかったのですが、どの楽器も定員オーバーで、余っていたのがファゴットだったんです(笑)。ですが、初めて演奏したときから楽しいと思える、不思議な楽器でした。練習では酸欠になることもあり、たくさん苦労を重ねましたが、当時、「将来もこの楽器を続けたい」と漠然と思ったことを今でも鮮明に覚えています。
-ファゴットのどのようなところに魅力を感じられたのでしょうか。
私は元々声が低い方で、ファゴットの低音を聴いているととても安心するんです。自分の声の音域とファゴットの音域が似ている気がして、とても自分にあっている楽器だと思いました。
-9月から始まる定期公演に向けて、おすすめ公演と意気込みを教えてください。
この曲は、15年ほど前に私がN響の入団前にエキストラとして呼んでいただいたときに演奏した曲です。第4楽章の冒頭はファゴット2本のユニゾンから始まり、それを今回、私の大好きな指揮者の一人、トゥガン・ソヒエフとともに演奏ができることに、今からワクワクしています。
今やクラシックもスマホやパソコンで簡単に音源や動画を見ることができる時代ですが、やはり生のオーケストラでしか味わえないことがたくさんあります。楽曲ひとつひとつにさまざまな物語があり、それを表現する奏者の呼吸や熱量など、演奏を見ているだけでも楽しいと思いますので、ぜひホールへ足を運んで生の音に触れていただければと思います。
佐藤由起(ファゴット奏者) Yuki Sato
桐朋学園大学音楽学部卒業、シドニー大学大学院修了。これまでに浅野高瑛、武井俊樹、吉田將、マシュー・ウィルキーの各氏に師事。第21回日本管打楽器コンクール第2位入賞。宮崎国際音楽祭、セイジ・オザワ松本フェスティバル等出演。2009年よりNHK交響楽団ファゴット奏者。洗足学園音楽大学、桐朋学園大学非常勤講師。
歌って踊れる、それがコントラバスの魅力。 |矢内陽子(コントラバス奏者)
-クラシック音楽との出会いは何でしたか。
父の趣味がクラシック・ギターだったということもあって、音楽は、子どもの頃から当たり前のように聴いて育ちました。小学校1年生のとき、初めて生のオーケストラを聴いて「うわ、なにこれ!」と衝撃を受け、それから当時のテレビ番組『N響アワー』を見るようになったのがクラシック音楽との出会いです。
-奏者を志した理由をお聞かせいただけますか。
中学の頃から独学でコントラバスを始めていましたが、当時は、自分がプロの奏者になるなんて全く思っていませんでした。通っていた高校が商業高校でしたが、途中までは、「私は看護師になる」と決めていたんです。ですが、元来負けず嫌いな性格もあり、がむしゃらにコントラバスの練習を重ねた結果、高校3年生の時に音大に進む道もあると気がつきました。
私は、自分にとって何が幸せかを考えて常に行動しています。とにかくコントラバスが大好きで、コントラバスを弾いている時がどんな時よりも楽しかった。看護師は音楽でうまくいかなかったときにもう1度チャンスがあると思いましたし、ここで音楽を諦める選択肢は当時の私にはなくて、音楽の道へ進むことを決めました。
-矢内さんが感じるコントラバスの魅力とはなんでしょうか。
演奏しながら歌ったり、踊ったりもできるところです。初めてオーケストラを見たときに、演奏者の皆さんが誰よりも楽しそうに演奏していた感動が忘れられなくて、私もいつもあんな風に楽しく演奏したいと思っています。
-9月から始まる定期公演に向けて、おすすめ公演と意気込みを教えてください。
この曲は出だしによく注目して聴いていただきたい曲です。コントラバスはミの2分音符から始まりますが、この音の世界観次第で、オーケストラ全体を生かすも殺すもできてしまうとても重要な音です。私自身も過去にオーディションでもこの部分をよく練習したこともあって、思い入れのある大好きな曲ですね。ぜひ会場で、空気感も含めて体験して欲しいと思います。
矢内陽子(コントラバス奏者)Yoko Yanai
群馬県伊勢崎市出身。13歳からコントラバスを始め、洗足学園音楽大学を優秀賞を受賞し卒業。同大学大学院を首席で修了。在学中、洗足学園音楽大学フィルハーモニー管弦楽団とコントラバス協奏曲を共演。秋山和慶氏による若手育成オーケストラ、洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団の一期生、首席として研鑽した後、2013年NHK交響楽団入団。矢吹けさみ、金岡秀典、井戸田善之の各氏に師事。洗足学園音楽大学講師。
何気なく始めたヴァイオリンが一生のパートナーに。|後藤 康 (ヴァイオリン奏者)
-クラシック音楽との出会いは何でしたか。
両親のすすめで3歳からヴァイオリンを始めて、物心ついたときにはすでにヴァイオリンを弾いていた記憶があります。当時は、ただ楽しいから弾いていたというだけ。まさか自分が今の仕事につくとは、全く考えていませんでしたね。
-入団する前にN響のオーケストラを聴いたことはありましたか。
高校生までは大分に住んでおり、聴く機会はほとんどありませんでした。高校を卒業するときに音楽の仕事でやっていくことを決意し、上京しました。大学生の頃は、何度か聴きに行った経験もあります。
-N響に入団したいと思ったきっかけをお聞かせください。
N響は日本を代表する素晴らしいオーケストラであることは前々から知っていたので、オーディションを受けました。縁あって今、素晴らしい先輩方と一緒に音楽ができることを非常に嬉しく思っています。
-特に思い入れのあるクラシックの一曲はありますか?
ブラームスの《交響曲第2番》です。N響のオーディションに合格し、試用期間中に初めて演奏した一曲です。これまで観ていた、知っていた、憧れのN響の舞台で自分も一楽員として演奏できたことが思い出深く、心に残っています。
-9月から始まる定期公演に向けて、おすすめ公演と意気込みを教えてください。
まずは王道のベートーヴェンを聴いてほしいです。今回はファビオ・ルイージのN響首席指揮者就任記念ということもあり、ユースの皆さんにはもちろん、大人の方々にもぜひ聴いていただきたい公演です。
後藤 康(ヴァイオリン奏者)Ko Goto
大分市出身。3歳よりヴァイオリンを始める。第66、68回全日本学生音楽コンクール高校の部北九州大会第1位。第68回同コンクール高校の部全国大会横浜市民賞。第14回ヴィエニアフスキ・リピンスキ国際ヴァイオリンコンクール第3位。第3回ガダニーニコンクール第3位。第13回別府アルゲリッチ音楽祭、第20回記念別府アルゲリッチ音楽祭に出演。これまでに、篠崎永育氏、川瀬麻由美氏、辰巳明子氏に師事。2020年よりNHK交響楽団楽員。
楽しいときにはいつも音楽がそばに。| 黒田英実(打楽器奏者)
-クラシック音楽との出会いは何でしたか。
スタジオジブリの作品が好きで、父がよくサウンドトラックをかけてくれました。小学校3年生くらいの頃から「こんな素敵な音楽を演奏する側になったら幸せだろうな……」と、夢見ていましたね。また、誕生日やクリスマスなどのイベントの時にはいつも、母が童謡のカセットテープをかけてくれて。幼い頃から、楽しい時にはいつも音楽があったと記憶しています。
-打楽器をはじめたきっかけを教えてください。
中学校から部活動をきっかけに打楽器を始めました。「サックス」や「ホルン」を希望していましたが、じゃんけんに負けてしまい打楽器の担当に。第3希望に「ドラム」と書いていたのですが、それもドラムの先輩がかっこ良かったという理由だけでした。ですが、始めてみると楽しくて。高校でも吹奏楽部に入部し、打楽器を続けていました。部員数100人以上の大所帯でしたが、コンクール等には出場せず、只々楽しく活動していました。
-なぜ本格的に音楽の道を志されたのでしょうか。
吹奏楽の作品に沢山触れる中で、もっと難しい曲にも挑戦したいと思うようになって。でも、当時の自分達の技術では到底できない。もっと上の世界を見てみたいと強く思うようになり、それから本格的に音大を目指すことを決めました。大学入学後は、クラシックに限らず色々なジャンルの打楽器を学び、進路は大いに悩みましたが、数々の素晴らしいご縁があって今この場にいます。
-9月から始まる定期公演に向けて、おすすめ公演と意気込みを教えてください。
チェコを代表するクラシック音楽の若手指揮者として知られる、ヤクブ・フルシャさんの指揮でこんな楽しげな曲が演奏されるなんて、その意外性に私自身も興味津々です。誰もが一度は聴いたことのあるとても有名な曲で、はじめての方でも気軽に楽しんでいただけると思います。打楽器もたくさん演奏するパートがありますのでぜひ注目していただきたいです。
黒田英実(打楽器奏者)Hidemi Kuroda
武蔵野音楽大学器楽学科打楽器専攻卒業、同大大学院音楽研究科器楽(打楽器)専攻卒業。第25回日本管打楽器コンクール第3位(パーカッション部門最高位)入賞。特別大賞演奏会にてソリストとして日本フィルハーモニー交響楽団と共演。これまでに打楽器を、安藤芳広、安藤淳子、小谷康夫の各氏に師事。2014年よりNHK交響楽団打楽器奏者。武蔵野音楽大学講師。
音の重なりや響きの深さこそが、オーケストラの魅力。|菊本和昭(首席トランペット奏者)
-クラシック音楽との出会いは何でしたか。
6つ上の姉がやっていた吹奏楽を聴いたのがきっかけです。オーケストラ音楽はテレビから聞こえてきた記憶があります。家では父親がグループサウンズ世代なのでどちらかというとポップス・サウンズ、演歌などの方が親しみやすい音楽でした。まさか一家の中からクラシック音楽を生業にする人が出るということは誰も想像できないような環境で育ちました。
-なぜ音楽の道を志されたのでしょうか。
もともとはクラシック音楽というよりは、トランペットにのめり込んでいて、教員を目指していました。プロのオーケストラ奏者を目指そうと決めたのは遅く、大学に入学してから。徐々にオーケストラの魅力に気づき、その先にN響がありました。
-クラシック音楽の中で特に思い入れのある一曲はありますか?
コープランド作曲の《アパラチアの春》ですね。17歳の頃、アメリカ音楽が好きだった時期があり、初めてCDでオーケストラを聴きました。それまでは、吹奏楽の枠組みの中でしか音楽をやっていなかったため、この曲を聴いて、吹奏楽にはないオーケストラの音質や音の重なり、響きの深さに、当時驚きました。トランペットが特に目立つような曲ではありませんが、コープランドという作曲家の独特なリズムや和声感にトランペットも関わっている。トランペットも1音としてオーケストラに彩りを加えられるようになっている、自分にとって音楽の世界が広がった曲です。また、ドヴォルザーク《交響曲第8番》は、大学2年生の時に生まれて初めて演奏した交響曲ですね。第4楽章にトランペット2本のユニゾンがあって、今も演奏する時は当時のことを思い出します。
-9月から始まる定期公演に向けて、おすすめ公演と意気込みを教えてください。
この曲は高校1年生のときに吹奏楽版で演奏した曲です。僕の高校時代の思い出と重ね、若い世代のみなさんにもどこか通じるものがあるのではないかと思います。ぜひ、この機会にホールに足を運んで聴いてみてくださいね。
菊本和昭(首席トランペット奏者)Kazuaki Kikumoto
NHK交響楽団首席トランペット奏者。京都市立芸術大学首席卒業および同大学院首席修了。フライブルク音楽大学、カールスルーエ音楽大学にて学ぶ。第19回日本管打楽器コンクール第1位。第72回日本音楽コンクール第1位および増沢賞。E・スミス国際トランペット・ソロ・コンペティション第2位などの賞歴がある。京都トランペットグル-プ「Summer Breeze」、ジャパンブラスコレクション、いずみシンフォニエッタ大阪、兵ブラスクインテット各メンバー。2004年より約7年間京都市交響楽団に在籍。トランペットを早坂宏明、有馬純昭、A.プログ、R.フリードリヒ、故・Dr.E.H.タール各氏に師事。室内楽を呉信一氏に師事。東京藝術大学非常勤講師。大阪音楽大学客員教授。